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らてるね賞2015の大賞受賞者インタビューです。

2015年の大賞に輝いた、安田せひろさんから
インタビューの回答が届きましたので
紹介させていただきます。

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Q:1
 らてるね賞を受賞したと聞いた時のことをお聞かせください。
A:1
 とても嬉しかったです。
  "らてるね" という言葉が柔らかに暖かくて、どんなときに灯しても素敵だなぁと。
 私には身にあまる光栄なのでは、と不安に纏われる怖さも覚えましたがとても喜びました。
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Q:2
 受賞作はどういう構想・アイデア・経緯でデザインなさったんですか?
A:2
 ユニットとして初めての公演だったので、
 当日多くの人に来てもらえるようにするのはもちろん、
 本来この舞台を求めている人がみれなかった時
 「次こそ、ここの演劇みに行きたいな」と気にかけてもらえる構造をチラシにもたせたいと考えました。
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 今回の公演は、作・演出の頭の中にしっかりとビジュアルが存在していました。
 そのビジュアルを再現しつつ、
 本の持っていそうな雰囲気を自分の中へ引き出して保ちながら行わなければなりません。」 
 その引き出しのヒントとして、どんな舞台になりそうか
 作・演出と舞台美術担当と舞台装置作りを共有する機会があり、
 それがとても役立っていたとおもいます。
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 チラシを作るうえでの目標は、
 舞台で起こる出来事がみる人たちの潜在意識へ受け入れられる準備を、
 こっそり促すことでした。
 しかし、集まっている感覚を上手く表現へ変えられず路頭に迷ってしまい、
 納期をズルズルと延ばし大きな迷惑を掛けてしまいました…。
 入稿した後に気づいたのですが、この公演の舞台が冷戦時代の分断されたドイツに近かったので、
 紙のサイズをA4のような日本の規格ではなく、
 ベルリナー判のような日本ではあまり使わない縦横比の紙で作る工夫が必要だったかもしれません。


Q:3
 受賞作の他にも、これまで手掛けられた演劇宣伝美術作品があればご紹介ください。
A:3
1.
 2015年10月2,3,4日に演劇専用小劇場BLOCH[ブロック]での公演
 含有複合団体fukumaru「まだきっと月がある」にて
 当日配布されたパンフレットを作成。
 A4二つ折り用紙は再生紙70g/㎡A3判変形。
 二つ折りの状態で縦265㎜×巾210㎜

2.
 2016年4月28,29,30日にことにPATOSでの公演
 含有複合団体fukumaru 「東海道傾奇者回遊記」にて
 当日配布された下記2種類のパンフレットを作成。

2-1. 作品をおもい出すためのもの(連判状)
 A4三つ折り。用紙はインクジェット対応の大礼紙A3判変形、全6ページ。
 折った状態で 巾126.5㎜×長さ297㎜


2-2. 関わったみんなを一人一人おもい出すためのもの(瓦版)
 A4四つ折り、用紙は再生紙70g/㎡のA3判。


3.
 2016年7月22,23,24日に扇谷記念スタジオ シアターZOOでの公演
 RED KING CRAB「我夢捨螺」のチラシを作成。
 用紙上質紙110g/㎡のA4判。
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4.
 2013年1月16,17,18,19,20日に札幌資料館ミニギャラリーでの展覧会
 「巡り 回り 潜る」お芝居ではないのですが、Q:9に関連して
 演劇と範囲を共有するかもしれないとおもっているインスタレーションを土台に行われた展覧会のDMを
 展開を行う全員でミーティングを重ね制作し、配布。
 100㎜×100㎜。上質紙で厚手のもの。


Q:4
 演劇宣伝のデザイン以外にも演劇の活動をなさっていますか?ご自身の演劇活動について
 もしあればお聞かせください。
A:4
 役者として2回舞台に立って、演者として3回劇場に居ました。
 2014年札幌ハムプロジェクト「カラクリヌード」場所:生活支援型コンカリーニョ
 2014年 田仲ハル演出の舞踏公演「カムウィズミー」場所:conte sapporo
 2015年 田仲ハル演出の舞踏公演「銀鱗回廊」場所:ことにPATOS
 2015年 堀内まゆみ梅村和史柴田詠子演出公演「現象」場所:ことにPATOS
 2016年4月含有複合団体fukumaru「東海道傾奇者回遊記」場所:ことにPATOS

 …詳細はQ:9でもこたえたいとおもいます。
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Q:5
 演劇宣伝デザインを始められたきっかけは何でしたか?
A:5
 チラシをやってみたいとおもっていた時に声をかけてもらったのがきっかけです。

 お芝居をみるのは、とても疲れることだとおもっています。
 みたあとに気づかないものほど深く何かを消耗させているのだとおもっています。
 その消耗を何か形が残るもので回復できればと考えておりました。
 その時に声をかけてもらったのがきっかけです。


Q:6
 演劇の宣伝美術の仕事と、他のデザインの仕事とでは、何が違いますか?
A:6
 他のデザインの仕事をよく知らないので何が違うのかはわからないです。
 ただ、演劇の宣伝美術に関してはチラシやパンフレットのような記録媒体として
 外側から作品の中へ、また内側から外への通路をデザインする仕事なのかなとおもいます。
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Q:7
 演劇の宣伝美術において心がけていること、こだわっていることはありますか?
A:7
 宣伝美術の作業をするうえで、出来るかぎり本への出入りを試して
 雰囲気の見当をつけた後に、一度忘れる期間を設け
 本の雰囲気を潜在意識へ溶かす作業を挟みたいと強くおもっています。
 本の雰囲気を潜在意識へ溶かすことで、拡がる空間を持ちながら
 無心で絵を描くことを出来ると考えています。
 そうすることで、直接的なモチーフのまだ置かれていない地からでも、
 舞台へ繋がっていく手立てを用意できるのかなとおもっています。
 でも、なかなか上手くできなくて辛いです。
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Q:8
 北海道の演劇宣伝美術の現状について何かお感じになることがありますか?
A:8
 札幌じゃない道内や道外のチラシが集まってきて、
 気軽に手で触れられるような仕組みが、
 喫茶店のような寛げる場所にあるといいなぁとおもうことがあります。
 個人の宣伝美術の現状を考えてみると、
 ポートフォリオを用意してそれを手元に話をしておく必要があったのかなと感じる場面が多々ありました。
 今までの自分の表現が、これから作る舞台の雰囲気からどれくらいの
 距離を持っているのかを確認し共有した上で試作とフィードバックの質を
 高い状態で繰り返すことで宣伝美術も舞台作品繋がってゆける気がします。
 自分の今までの表現が共有されていない状態で作品を作るのは、とても不安です。
 もちろん情報を拡めることが優先されるのですが、
 自分はその舞台作品の一部としての仕事をチラシにさせてあげられているのか、
 舞台からチラシが分離してしまっていないかが不安です。

Q:9
 今後の野望や展望、直近の予定などおありでしたら聞かせてください。
A:9
 広い意味合いでの演劇には、
 自分が過去にやってしまっていたことと重なってみえる立ち位置があるとおもっています。
 その立ち位置は宣伝美術を担当する上でも通る部分でもあるとおもいます。
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Q:4に関係してくるとおもうことなのですが、
 自分は学生の時にヨーゼフ・ボイスの社会彫刻の概念と
 マーク・ロスコのシーグラム絵画に興味を持ちました。
 インスタレーションという作品の設置効果の読み取りに重心を置いた
 美術作品の制作実験をすることでその興味を燃やすため、
 自分の制作した絵を壁とした小部屋の中へ自分自身を素材としておいておいたり、
 絵を支持体から下塗り、中塗り、上塗り、そして保護層までを
 どう意識と無意識のバランスを保ち仕上げてゆくかに気を揉んだりしていました。
 そうして表れたものが、通行者や観測者、鑑賞者が
 空気を共にするとき現れるものと表れているものの差異がどんな様相をみせてくれるのか。
 会期中その場でとる睡眠の中、
 目の細くなった感覚受容器として読み取るものはなにかなと試しました。
 そうした制作実験から自分の感覚受容器で読み取ったものの変換を繰り返し表現としてゆくうえで、
 "演劇"と"その時々の立ち位置"との関係性はどのようなものなのかをみようとし、
 考え、悩み、模索しているのが現状です。

 演劇シーズンでもう行われていることではありますが…
 まず、今回いただいた賞金を全て宣伝美術の予算とし
 作品の構造を拡張し進めて行くと何が変わってくるのか
 試し様々なことに気づいて行きたいとおもいます。

Q:10
 らてるね賞の今後に期待することや、このFacebookのページにどんなことを期待しますか?
A:10
 素敵なチラシをみつけたらだれでも投稿できる仕組み
 (Facebookで考えると多分、投稿された記事へのコメント欄)があって、
 それを気にかけてくれる らてるね賞の関わる人達の
 応答したい時に応答するというのはいかがでしょうか。

 らてるね賞については、
 いつかできる宣伝美術に関した大きい賞のまわりを、
 ほんのり照らすやさしい賞という印象を持っています。
 選評にある厳しくも励ましの力がある言葉、頂いた時にこれからがんばろうとおもいました。
 チラシをみた人が何をどう受け取ったのかが曖昧になりがちなので、
 その宣伝美術さんが関わった公演にとっても、新鮮で素敵な機会だとおもいます。
 なんにも応募していなくても、
 舞台に関わる人たちの力で多くの人の手元へ届いていることをおもい知るきっかけとなり、
 大きな糧となる賞なのだとおもいます。

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