らてるね賞2018大賞受賞者 若林瑞沙さん
らてるね賞2018の大賞を受賞してくれたのは
札幌座「フレップの花、咲く頃に」と
Yhs「きつい旅だぜ」のデザイナー
若林瑞沙さんです。
若林さんはこれまでにも
2013年、特別功労賞を受賞してくれてますし
(詳しくは、このブログの<https://laterne.blog.so-net.ne.jp/2015-06-15-1>と
2015年にらてるね賞実行委員会で配布したチラシもデザインしてくれたり
らてるね賞2015では
札幌座「空知る夏の幻想曲」で審査員特別賞
らてるね賞2017では
札幌座「象じゃないのに」で優秀賞
を受賞してくれています。
そして今回初めて、大賞を受賞してくれました。
若林さんへは、大きならてるね(LEDランタン)と賞金5万円
そして審査員の皆さんからの選評をもとにしたこのような言葉を送らせていただきました。
この2作品が、同じデザイナーとは!引き出しの多さに審査員一同驚かされ、大賞は若林さん以外にないと、全員納得しました。
「フレップの花、咲く頃に」は、畳の目や敷物の織り目まで書き込んだ繊細さ、日本の中に、ロシア、朝鮮そしてアイヌそれぞれの文化のシンボルを表わし、この劇のテーマをさりげなく伝えて、静謐ともいうべきおだやかな生活風景の中に、さまざまな劇性が嗅ぎ取ることができました。
「きつい旅だぜ」は、大胆な構図と勢いのある筆使いで、青ざめた顔の男性が豪華な鯛の御造りを手にし、そこにユーモア感をただよわせた黄色の大きな文字を配置し、対比されている暗喩それぞれが微妙なバランスであり、軽妙でありながら緊張感を失っていません。
一方は象徴的モティーフを繊細に描き静謐な世界を作り出し、他方は自由闊達な筆さばきと大胆な構成で見る者を圧倒。しかしどちらにも共通して、ウィットに富んだコミカルなテイストがあり、それがこの作者特有のものなのだろうと、気づかされました。観客に対し直接的に表現を投げかけるのではなく、観客自身の中に存在する想像力に訴えることで、フライヤーの目的である「舞台へいざなう」仕事が成就しています。
この2作品には間違いなく「メタファー(暗喩)の成功」があります。メタファーを嗅ぎ取ることができる観客ならば、舞台を想像してつい観に行こうかと思ったに違いありません。
審査員一同、満場一致で、らてるね賞2018大賞を贈らせていただきます。
若林さんへのインタビューです。
Q:1 らてるね賞を受賞したと聞いた時のことをお聞かせください。
普段しない夕飯を珍しく作っていた時に電話を頂きまして、大賞です、と。素直に嬉しかったです。夕飯の味がゴージャスになりました。二作品合わせての賞で、ひとつが初めてお仕事させて頂いたyhsさんだったのでそれも嬉しかったです。
Q:2 受賞作はどういう構想・アイデア・経緯でデザインなさったんですか?
札幌座さんの「フレップの花、咲く頃に」は1)敗戦後のサハリンで生活していた方の手記を元にした脚本2)フレップという赤い実をビジュアルに出したい3)日本人とロシア人との不思議な交流(そこに韓国人とアイヌも加わる)上記が最初の打ち合わせで貰ったヒントです。脚本はまだ無い状態でした。戦後の特別ドラマチックな話を書くのでは無く、日々を生きて行く日常、それこそ人の日記を覗き込む様な芝居なのだなと打ち合わせで感じたので、挿絵の様なビジュアルにしようと考えました。
最初は、このお話の背景には史実があるので、家の造りや壁はそもそも白壁でいいのか?木目?窓のデザインはどんな感じ?と考える度手が止まってしまい、作業がまったく進まなかったんです。その時代の「匂い」みたいなものを私が把握していないとこれはダメだなと。歴史は調べると出てくるんですけど、私が知りたいのは視覚的なものだったので開拓の村にいって資料写真を撮りにいきました。実はこの時まで家の外観とその庭にフレップの実が咲いている構図を考えていたので資料写真がほとんど外観で、全く役にたって無いんですけど…でも色々な雰囲気を感じられたので、その後は完成したビジュアルになるまで早かったです。簡易的な神棚や白壁の雰囲気、こじんまりした間取り、柱時計のデザインが意外とちゃんとしていた事、ペラペラの座布団。そこにロシアの人々がきたらどう部屋をレイアウトするかなと想像して、神棚にマトリョーシカ、畳にロシア伝統の柄の絨毯、ちゃぶ台に似合わないデカいサモワールなどアイデアをプラスしていきました。肝心なフレップの実も生活の一部として見せようと漬物壺でジャムを作っている設定にしました。
演出家の斎藤歩さんに初校を見せた時に、韓国とアイヌの要素も少し足して欲しいというリクエストを頂いたので白無地の座布団からそれぞれのイメージの座布団の柄に変更しました。このリクエストにより、チラシにストーリー性と観る人の期待感がぐっと高まったと思うので、ありがたかったです。
yhsさんの「きつい旅だぜ」はこの作品は、あるシーンによって、観客がステージを客観的に観る側から突然舞台に立たされるような感覚になる大きな展開があるお話です。脚本・演出の南参さんから、ネタバレせず、あらすじにもそこは明記しない方向で進めたいというリクエストでした。
舞台を観た方は分かるかと思うのですが、チラシ表の旅館の男は実際には舞台に登場していません。でも鍵を握る人物です。打ち合わせしていく中で、舞台には登場しないこの人物をメインにしてもいいよねという話になり、その方向でビジュアル案を考えていきました。チラシで狙ったのは「人はいかに情報に左右されるか」。観客が舞台を観る前と後でチラシの印象が変わる事を意識しました。舞台もそこが大きなテーマだと思うので、リンクできたらいいかなと…。
なので、この男が印象に残るように全面に、さらにタイトルで挟む事で視覚的にビジュアルに目がいくようにしました。絵のタッチも淡白と陽気が混ざるように。家族のお話なので身内の誰かが描いたような素朴感が出るようにパステルを使用しました。服や顔の灰色は微妙な素材感を出したかったのでパソコンで塗った色を一度出力→スキャンして色むらを出しています。比べないと正直解らないレベルなんですけど、パソコンで塗るよりパステルと自然に馴染ませる事ができたかなと思います。
単純な線で書く絵は非常に難しくて、少しの角度で全然印象が変わるので苦労しました。昨年作ったチラシで一番初校まで時間がかかったのがこのチラシだと思います。
Q:3 受賞作の他にも、これまで手掛けられた演劇宣伝美術作品があればご紹介ください。
去年の札幌座「暴雪圏」今年では劇団千年王國「贋作者」tatt「命を弄ぶ男ふたり」や日本劇団協議会「二人で狂う~好きなだけ」などを担当させて頂きました。
札幌座「暴雪圏」
千年王國「贋作者」
tatt「命を弄ぶ男ふたり」
日本劇団協議会「二人で狂う~好きなだけ」
2000年~2018年前半までの宣伝美術はホームページにアップしています。www.st-copain.com演劇以外の演奏会やリサイタル、バレエなどのチラシも担当させて頂く事もあります。後は、飲食店や施設のロゴ、オープンに関わる制作物、パンフレット等が多いです。
FOREST of NEW ARTS
萩原のり子リサイタル「私の好きな歌」
去年はソプラノ歌手の小林美佐子さんと後藤ちしをさんのCDジャケットを制作しました。その少し前に福井岳郎さんのCDをデザインした時が初めてだったのですが、このジャンルも奥が深いなぁと思いました。どの作品もとても良い経験をさせて頂きました。
福井岳郎さんの「ツキノホ」
Q:4 演劇宣伝のデザイン以外にも演劇の活動をなさっていますか?ご自身の演劇活動についてもしあればお聞かせください。
2016年に日本劇団協議会「鳥」の舞台デザインを担当しました。
若林さんによる「鳥」の舞台模型
この時学んだ事は舞台を作る事の大変さ。作品の精度を上げるための演出家・キャスト・スタッフの努力は想像の何十倍も凄かったです。それが最終日まで続くんですよ。尊敬と同時に舞台人は変人だ!と思いました。私は普通の人間です。
完成した「鳥」の舞台美術
Q:5 演劇宣伝デザインを始められたきっかけは何でしたか?
99年だったと思うのですが「逃げてゆくもの」(2000年公演)という作品のデザイナーコンペがあり、勤めていた会社の社長が出す予定だったのが諸事情で新人の私が出す事になり、それが採用された事がきっかけです。
Q:6 演劇の宣伝美術の仕事と、他のデザインの仕事とでは、何が違いますか?
大きく違うのは、宣伝美術は「お客様のご自由に」という意識がある事だと思います。グラフィックデザインの仕事の大半はクライアントが明確に伝えたい事があって、デザイナーはその情報をどのような方法で「正確」にお客様に伝えるかを考えるのが一番重要です。宣伝美術も勿論、演出家・脚本が伝えたい事はあります。デザイナーも「こんなメッセージを表現したい」という軸みたいのは勿論あるのですが、舞台はそもそも「こう感じる事が正解です」って事は無いですよね。チラシをみてどんな舞台なのかを当日まで想像するのはお客様ひとりひとりバラバラで、自由。手に取る側のその時のコンディション次第で目に止まるチラシは違うとも思っています。
Q:7 演劇の宣伝美術において心がけていること、こだわっていることはありますか?
お客様に丸投げしない事です。上記の質問の答えと矛盾してますがふわっとしたデザインとか、どんなジャンルなのか分からな過ぎると足を運びづらいですよね。その作品の売りを明確にする事。公演情報はわかりやすくする事。は大前提だと思っています。
ふたつの質問を合わせると、伝えたい事はちゃんと意識して表現する事、かつ受け止めるお客様が自由に想像できる隙を作る事でしょうか…。偉そうに書いてますが、私の常々の目標です。
若林さん、ありがとうございました。
そして、おめでとうございました。
今後も、札幌の演劇をよろしくお願いいたします。
らてるね賞2018、優秀賞受賞者その2・本間いずみさん
らてるね賞2018、受賞者紹介第3弾は
弦巻楽団「センチメンタル」のデザイナー
本間いずみさんです。
本間さんはらてるね賞を初めて受賞してくれました。
本間さんが教えてくれた、受賞作以外の作品を見ると
「ああ、これも本間さんなんだ」と 皆さんも目にした作品の多いデザイナーさんです。
そんな本間さんには 賞金1万円と、小さならてるね(LEDランタン)
そして審査員の選評をもとにした、このような言葉を賞状にしたためさせていただきました。
シンプルな構図が美しく、センチメンタルな世界に心惹かれました。眺めていると、静かにメルヘンの世界に引き込まれ心が穏やかになる、そんな不思議な魅力に満ちた作品です。文字の儚さと、写真の持つ危うさが、舞台の雰囲気を伝えてくれ、わずかな陰翳、そして大声で主張しない文字の配置などが、物語の予感に満ち、清潔感にあふれ、センスが抜群です。
心が萎えているとき、こういうチラシに出会うと、心が和みます。絵本の1ページのように、自然体で語りかけてくれる気がしました。
今後も温かみのあるデザインで、札幌の演劇に彩と刺激を与えてくれることを期待して ここに、らてるね賞2018優秀賞を贈らせていただきます。
本間さんへのインタビューです。
Q:1 らてるね賞を受賞したと聞いた時のことをお聞かせください。
実は今まで「らてるね賞」の存在を知らなかったもので、こんな素敵な賞を頂けるなんてとても驚きました。
Q:2 受賞作はどういう構想・アイデア・経緯でデザインなさったんですか?
今回の「センチメンタル」の場合、演出家の弦巻さんから出てきたキーワードが、たしか「ホームドラマではあるのだけれど、切ないお話」「作り物のような家族」「儚さ」「色で言ったらグレーというか曇り空…みたいな」といった感じだったと思います。で、あーだこーだ色々パターンを作ってみた結果、ああなったと。 ザックリですみません(笑)
Q:3 受賞作の他にも、これまで手掛けられた演劇宣伝美術作品があればご紹介ください。演劇以外のデザインのお仕事もあれば、教えてください。
弦巻楽団「ユーキャント・ハリー・ラブ!」
弦巻楽団「果実」
intro「モスクワ」
intro「食卓全景」
弦巻楽団「歌は自由を目指す」
intro「わたし~THE CASSETTE TAPE GIRLS DIARY-」
普段は音楽関係のお仕事を主に手がけておりまして フライヤーやロゴを作ったりツアーグッズやファンクラブの会報などのデザインをしております。
Q:4 演劇宣伝のデザイン以外にも演劇の活動をなさっていますか?ご自身の演劇活動についてもしあればお聞かせください。
いえ、演劇はもっぱら観る専門です。
Q:5 演劇宣伝デザインを始められたきっかけは何でしたか?
演劇界隈でのプロデュース&制作で有名な(なのかな?)コムロさんと古くからの知り合いでして コムロさんからのご依頼ですね。
Q:6 演劇の宣伝美術の仕事と、他のデザインの仕事とでは、何が違いますか?
演劇や音楽のフライヤーのように、自由な発想と自分のセンスで1枚のビジュアルの世界観を作っていくという作業は、一般の企業広告の仕事だと(道内の仕事では特に)なかなか出来ない事が多いので、生み出す時は大変ですけど、出来上がった後は満足感と愛着感が増します(笑)
Q:7 演劇の宣伝美術において心がけていること、こだわっていることはありますか?
こだわり…と呼ぶかどうか分かりませんが 演出家さんの頭の中にぼ?んやりと浮かんでいる物語のイメージや空気感をチラシを手に取ったお客様に、できるだけ直感的に伝わるように…ですかねぇ。「ラブコメだと思ってそういう気分で観に行ったのに実はサスペンスだった!」ってなるのが、個人的に嫌なので(笑)そこらへんは心がけて作るようにはしています。
Q:8 北海道の演劇宣伝美術の現状について何かお感じになることがありますか?
劇場でもらうチラシの束を眺めていると、デザインのプロも素人もごっちゃまぜ状態でカオスな感じが 面白いですよね。
Q:9 今後の野望や展望、直近の予定などおありでしたら聞かせてください。
完全に乗り遅れ感満載なのですが、やっと最近、重い腰をあげて遂にインスタをはじめました。作品をちょこちょこアップしてますので、お時間ありましたら覗いてみてください。 https://www.instagram.com/df_zero3_design
本間さん ありがとうございました。
また、素敵なデザインを楽しみにしていますね。
らてるね賞2018、優秀賞受賞者その1・門間友佑さん
らてるね賞2018の受賞者紹介、その第2弾は
札幌市教育文化会館 コミュニティダンスWS発表公演
「しっぷまいろー」のデザイナー
門間 友佑さんです。
門間さんは、昨年のらてるね賞2017でも優秀賞を受賞してくれました。
2年連続の優秀賞です。
門間さんに差し上げた賞状には、審査員の皆さんの選評をもとにした
このような言葉を書かせていただきました。
製作者の意図とは別かもしれませんが、人生の在りように考えを巡らせてしまうような、オリジナルな絵柄だと感じました。シンプルな図柄ながら、妙に気になるデザインで、僅かな色づかいでも、ぐっと目に飛び込んでくるのが不思議です。
ゴールインする二人の方向が違う!なぜ?面白そう!と、ついつい手にとって、じっくり読みたくなります。ダンスのワークショップ公演とあるものの、身体性や競技性にあわせ遊戯性も内包した、「スポーツ」ではなく「身体をつかったなんらかの表現の競技」がうまくデザインできています。「こつぶでピリリ」という感じで、妙にケレン味の無い素直なデザインに、新しい時代の息吹を感じることができ、今後も札幌の演劇に新風を吹き込み続けてくれることを期待して、
ここに、らてるね賞2018優秀賞を贈らせていただきます。
門間さんへのインタビューです。
Q:1 らてるね賞を受賞したと聞いた時のことをお聞かせください。
個人的にすごく気に入っていたデザインだったのですが、
ぱっと見のわかりやすさはあまりないものだとも思っていたので
皆さんの目にとまり選んでいただいてうれしかったです。
Q:2 受賞作はどういう構想・アイデア・経緯でデザインなさったんですか?
演出の砂連尾さんからいただいた文章内にあったさまざまな「今までになかった競技」から着想を得て
二人の競技者のどちらが先にゴールしたのかわからないような状況をデザインしました。
一応片方が短距離走者、片方が長距離走者を意識したデザインになっています。
「しっぷまいろー」の「しっぷ」を舟、と捉えたデザインも提案しましたがこちらの案が採用されました。
Q:3 受賞作の他にも、これまで手掛けられた演劇宣伝美術作品はありますか?
昨年のらてるね賞で優秀賞をいただいた札幌市教育文化会館のワークショップ発表公演音楽劇「わが町」のデザイン(アートワークはクスミエリカさん)、
第一回北海道戯曲賞「悪い天気」のフライヤーなどです。
過去には劇団のイレブンナイン、弦巻楽団のロゴマークをデザインしました。
イレブンナインのロゴ
弦巻楽団のロゴ
演劇以外にはグラフィックデザイン全般の制作や映像制作などを行なっています。
Q:4 演劇宣伝のデザイン以外にも演劇の活動をなさっていますか?ご自身の演劇活動についてもしあればお聞かせください。
演劇活動はしていません。
Q:5 演劇宣伝デザインを始められたきっかけは何でしたか?
上記した弦巻楽団のロゴを制作したのが一番最初のきっかけだったと思います。
Q:6 演劇の宣伝美術の仕事と、他のデザインの仕事とでは、何が違いますか?
大きな差異は持っていませんが、手に取ったかたが実際に観劇するまでは何らかのバイアスなどがかからないように、通常の案件よりも多少抽象度の高いデザインにすることが多いかもしれません。
Q:7 演劇の宣伝美術において心がけていること、こだわっていることはありますか?
Q6での回答と基本的には同じことを心がけています。
Q:8 北海道の演劇宣伝美術の現状について何かお感じになることがありますか?
一昔前までよりしっかりと印刷、デザインしたものが増えたように感じます。
思いっきり手書きでコピー機印刷のものも独特な魅力を持つものがあって好きでしたが。
Q:9 今後の野望や展望、直近の予定などおありでしたら聞かせてください。
例えば紙モノをデザインするときや映像を制作する際に、その前段階から関わり全体をデザインをしていきたいです。直近は締め切りに追われています。
門間さん、本当にありがとうございました。
そしておめでとうございました。
これからも、期待しています。
札幌市教育文化会館 コミュニティダンスWS発表公演
「しっぷまいろー」のデザイナー
門間 友佑さんです。
門間さんは、昨年のらてるね賞2017でも優秀賞を受賞してくれました。
2年連続の優秀賞です。
門間さんに差し上げた賞状には、審査員の皆さんの選評をもとにした
このような言葉を書かせていただきました。
製作者の意図とは別かもしれませんが、人生の在りように考えを巡らせてしまうような、オリジナルな絵柄だと感じました。シンプルな図柄ながら、妙に気になるデザインで、僅かな色づかいでも、ぐっと目に飛び込んでくるのが不思議です。
ゴールインする二人の方向が違う!なぜ?面白そう!と、ついつい手にとって、じっくり読みたくなります。ダンスのワークショップ公演とあるものの、身体性や競技性にあわせ遊戯性も内包した、「スポーツ」ではなく「身体をつかったなんらかの表現の競技」がうまくデザインできています。「こつぶでピリリ」という感じで、妙にケレン味の無い素直なデザインに、新しい時代の息吹を感じることができ、今後も札幌の演劇に新風を吹き込み続けてくれることを期待して、
ここに、らてるね賞2018優秀賞を贈らせていただきます。
門間さんへのインタビューです。
Q:1 らてるね賞を受賞したと聞いた時のことをお聞かせください。
個人的にすごく気に入っていたデザインだったのですが、
ぱっと見のわかりやすさはあまりないものだとも思っていたので
皆さんの目にとまり選んでいただいてうれしかったです。
Q:2 受賞作はどういう構想・アイデア・経緯でデザインなさったんですか?
演出の砂連尾さんからいただいた文章内にあったさまざまな「今までになかった競技」から着想を得て
二人の競技者のどちらが先にゴールしたのかわからないような状況をデザインしました。
一応片方が短距離走者、片方が長距離走者を意識したデザインになっています。
「しっぷまいろー」の「しっぷ」を舟、と捉えたデザインも提案しましたがこちらの案が採用されました。
Q:3 受賞作の他にも、これまで手掛けられた演劇宣伝美術作品はありますか?
昨年のらてるね賞で優秀賞をいただいた札幌市教育文化会館のワークショップ発表公演音楽劇「わが町」のデザイン(アートワークはクスミエリカさん)、
第一回北海道戯曲賞「悪い天気」のフライヤーなどです。
過去には劇団のイレブンナイン、弦巻楽団のロゴマークをデザインしました。
イレブンナインのロゴ
弦巻楽団のロゴ
演劇以外にはグラフィックデザイン全般の制作や映像制作などを行なっています。
Q:4 演劇宣伝のデザイン以外にも演劇の活動をなさっていますか?ご自身の演劇活動についてもしあればお聞かせください。
演劇活動はしていません。
Q:5 演劇宣伝デザインを始められたきっかけは何でしたか?
上記した弦巻楽団のロゴを制作したのが一番最初のきっかけだったと思います。
Q:6 演劇の宣伝美術の仕事と、他のデザインの仕事とでは、何が違いますか?
大きな差異は持っていませんが、手に取ったかたが実際に観劇するまでは何らかのバイアスなどがかからないように、通常の案件よりも多少抽象度の高いデザインにすることが多いかもしれません。
Q:7 演劇の宣伝美術において心がけていること、こだわっていることはありますか?
Q6での回答と基本的には同じことを心がけています。
Q:8 北海道の演劇宣伝美術の現状について何かお感じになることがありますか?
一昔前までよりしっかりと印刷、デザインしたものが増えたように感じます。
思いっきり手書きでコピー機印刷のものも独特な魅力を持つものがあって好きでしたが。
Q:9 今後の野望や展望、直近の予定などおありでしたら聞かせてください。
例えば紙モノをデザインするときや映像を制作する際に、その前段階から関わり全体をデザインをしていきたいです。直近は締め切りに追われています。
門間さん、本当にありがとうございました。
そしておめでとうございました。
これからも、期待しています。
らてるね賞2018、特別賞受賞者・小佐部明広さん
らてるね賞2018の受賞者の皆さんを
ひとりずつ紹介させていただきます。
まずは、特別賞を受賞してくれた小佐部明広さんです。
小佐部さんは、劇作家・演出家でありながら
ご自身の作品の宣伝美術も手掛けていたのです。
これには審査員の皆さんも驚かれていました。
受賞作がこれです。
このチラシデザインに、審査員の皆さんからの選評をもとに
以下のような文面の表彰状と、記念のらてるね(ランタン)を差し上げました。
青い時代のもだえ、といった空気感が伝わり、思春期をテーマにしたこの作品を、大胆な構図と写真でひきつけるデザインは、とても官能的で洗練されていて、画面構成、写真処理、文字レイアウト、余白のバランスに一貫した美意識を感じました。
エクスタシーを感じているのか、あるいは胎児のようにも見える露光オーバー気味の半裸の女性はエロティックで、どこか儚ささえ感じさせてくれました。
芸術の重要テーマである「性」や「精神的葛藤」を舞台化するというカンパニーの冒険的な意欲を感じましたが、それをデザインする場合、「エロス」だけではなく、「生」や「死」も意識させることがデザインには必要です。
今後、さらなる作品への深い理解と挑戦・挑発を期待してここに、らてるね賞2018特別賞を贈らせていただきます。
そんな小佐部さんに、いくつか質問をしました。
Q:1 らてるね賞を受賞したと聞いた時のことをお聞かせください。
→らてるね賞のことは知っていましたが、自分とは縁のないものと思っていましたので、嬉しかったのも確かなのですが、それよりも意外な気持ちが勝り、なんとも不思議な感覚でした。
Q:2 受賞作はどういう構想・アイデア・経緯でデザインなさったんですか?
→イメージは白で、女性が横になっているのを上から撮るという構図はなんとなく頭にありました。出演者であるクラアク芸術堂の八木友梨をメインに『春のめざめ』の宣伝動画をつくるためにカメラを回していました。この画像は、彼女が胎児を殺してしまったシーンの後の1コマを加工したものです。(そのため、実は画素数がやや粗目になってしまっています。)
Q:3 受賞作の他にも、これまで手掛けられた演劇宣伝美術作品があればご紹介ください。
→主に自分が企画した舞台の公演のみデザインしています。
ある映画の話
暗転 または悪意の後継
分裂と光
Q:4 演劇宣伝のデザイン以外にも演劇の活動をなさっていますか?ご自身の演劇活動についてもしあればお聞かせください。
→主な活動は脚本を書いたり演出することです。6月に野田秀樹『赤鬼』を演出するのでぜひご来場ください。
Q:5 演劇宣伝デザインを始められたきっかけは何でしたか?
→自分が企画した公演で、宣伝美術を周りでお願いできる人があまりおらず、それならいっそ自分でやってしまったらよいのでは、と思い作り始めたのがきっかけです。
Q:6 演劇の宣伝美術の仕事と、他のデザインの仕事とでは、何が違いますか?
→演劇以外のデザインはしたことがありません。
Q:7 演劇の宣伝美術において心がけていること、こだわっていることはありますか?
→チラシのデザイン集など参考にしつつ、結局全然違うものになるのですが、最終的には全体のバランスがとれていること……だと思います。結局は直感で作っているので、もっと勉強します。
Q:8 北海道の演劇宣伝美術の現状について何かお感じになることがありますか?
→私が演劇を始めた10年前くらいに比べて、随分チラシの見栄えは全体的によくなっているように感じます。いいか悪いかはわかりませんが、商業感のあるチラシは少ないように感じます。
Q:9 今後の野望や展望、直近の予定などおありでしたら聞かせてください。
→宣伝美術については自分の好きでやっている範囲なので、これからもその範囲でやていこうと思います。脚本や演出の仕事はバリバリやっているので、6月の『赤鬼』や、8月のクラアク芸術堂本公演にぜひご来場ください。
以上です。小佐部さん、本当にありがとうございました。
そしておめでとうございました。
ひとりずつ紹介させていただきます。
まずは、特別賞を受賞してくれた小佐部明広さんです。
小佐部さんは、劇作家・演出家でありながら
ご自身の作品の宣伝美術も手掛けていたのです。
これには審査員の皆さんも驚かれていました。
受賞作がこれです。
このチラシデザインに、審査員の皆さんからの選評をもとに
以下のような文面の表彰状と、記念のらてるね(ランタン)を差し上げました。
青い時代のもだえ、といった空気感が伝わり、思春期をテーマにしたこの作品を、大胆な構図と写真でひきつけるデザインは、とても官能的で洗練されていて、画面構成、写真処理、文字レイアウト、余白のバランスに一貫した美意識を感じました。
エクスタシーを感じているのか、あるいは胎児のようにも見える露光オーバー気味の半裸の女性はエロティックで、どこか儚ささえ感じさせてくれました。
芸術の重要テーマである「性」や「精神的葛藤」を舞台化するというカンパニーの冒険的な意欲を感じましたが、それをデザインする場合、「エロス」だけではなく、「生」や「死」も意識させることがデザインには必要です。
今後、さらなる作品への深い理解と挑戦・挑発を期待してここに、らてるね賞2018特別賞を贈らせていただきます。
そんな小佐部さんに、いくつか質問をしました。
Q:1 らてるね賞を受賞したと聞いた時のことをお聞かせください。
→らてるね賞のことは知っていましたが、自分とは縁のないものと思っていましたので、嬉しかったのも確かなのですが、それよりも意外な気持ちが勝り、なんとも不思議な感覚でした。
Q:2 受賞作はどういう構想・アイデア・経緯でデザインなさったんですか?
→イメージは白で、女性が横になっているのを上から撮るという構図はなんとなく頭にありました。出演者であるクラアク芸術堂の八木友梨をメインに『春のめざめ』の宣伝動画をつくるためにカメラを回していました。この画像は、彼女が胎児を殺してしまったシーンの後の1コマを加工したものです。(そのため、実は画素数がやや粗目になってしまっています。)
Q:3 受賞作の他にも、これまで手掛けられた演劇宣伝美術作品があればご紹介ください。
→主に自分が企画した舞台の公演のみデザインしています。
ある映画の話
暗転 または悪意の後継
分裂と光
Q:4 演劇宣伝のデザイン以外にも演劇の活動をなさっていますか?ご自身の演劇活動についてもしあればお聞かせください。
→主な活動は脚本を書いたり演出することです。6月に野田秀樹『赤鬼』を演出するのでぜひご来場ください。
Q:5 演劇宣伝デザインを始められたきっかけは何でしたか?
→自分が企画した公演で、宣伝美術を周りでお願いできる人があまりおらず、それならいっそ自分でやってしまったらよいのでは、と思い作り始めたのがきっかけです。
Q:6 演劇の宣伝美術の仕事と、他のデザインの仕事とでは、何が違いますか?
→演劇以外のデザインはしたことがありません。
Q:7 演劇の宣伝美術において心がけていること、こだわっていることはありますか?
→チラシのデザイン集など参考にしつつ、結局全然違うものになるのですが、最終的には全体のバランスがとれていること……だと思います。結局は直感で作っているので、もっと勉強します。
Q:8 北海道の演劇宣伝美術の現状について何かお感じになることがありますか?
→私が演劇を始めた10年前くらいに比べて、随分チラシの見栄えは全体的によくなっているように感じます。いいか悪いかはわかりませんが、商業感のあるチラシは少ないように感じます。
Q:9 今後の野望や展望、直近の予定などおありでしたら聞かせてください。
→宣伝美術については自分の好きでやっている範囲なので、これからもその範囲でやていこうと思います。脚本や演出の仕事はバリバリやっているので、6月の『赤鬼』や、8月のクラアク芸術堂本公演にぜひご来場ください。
以上です。小佐部さん、本当にありがとうございました。
そしておめでとうございました。