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2014年 第3回らてるね賞で優秀賞を受賞した松崎修さんです。

 デザイナーとしてだけでなく、御自身でも作・演出をするなど、様々な演劇活動を展開している松崎さんにもインタビューを試みました。

Q:1
らてるね賞を受賞したと聞いた時のことをお聞かせください。
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 懲りずにフライヤー作ってて良かったなとしみじみ思いました。らてるね賞のことは以前から知っていました。いつか応募したいな、と思ったまま年月が過ぎていき、ついに昨年末、応募締め切り期日ギリギリでしたが、ようやく自分で応募しました。受賞できて本当に有難い限りです。

Q:2
受賞作はどういう構想・アイデアでデザインなさったんですか?
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 第7回さっぽろ学生演劇祭「超時空概論FRUITS BASKET」は自身の脚本・演出のものでしたので、頭の中にある脚本のラストシーンのイメージをなるだけそのまま表現したいと思い制作しました。写真はカメラマンの佐藤明日香さんにお願いして撮ってもらいました。さまざまな構図の写真の中から厳選し、ほぼ加工編集なしでそのままで使わせていただきました。
学生演劇祭「FRUITSBASKET」a.jpg
 「未来」=少女、「過去」=老人、「フルーツバスケットの椅子」=二人の出会いを繋ぐもの、のイメージでなるべくシンプルにインパクトのあるものを目指しました。また、制作した頃、焼酎「いいちこ」の歴代ポスター集をよく見ていたので、その雰囲気や影響もどこかにあったような気がします。

 劇団・木製ボイジャー14号「empty」の場合は、新規劇団の旗揚げ公演フライヤーということで、とにかく人の目につくインパクトのあるもの、ドカン!と見れるものを意識して作りました。
木製ボイジャーempty.jpg
 こちらは、脚本・演出の鎌塚慎平さんや代表の前田透さんのとの話し合いの中で出たイメージ、「こうしたい!」というアイデアをいただき、自分の中で膨らませて制作しました。作品の中で「空っぽの人間」「記憶」が重要な要素だと思ったので、「空っぽの人間」=マネキン、「記憶」=つぎはぎのデータの断片たちというイメージで表現しました。つぎはぎの編集作業が、地味な作業で辛かった記憶があります。

Q:3
受賞作の他にも、これまで手掛けられた演劇宣伝美術作品があればご紹介ください。
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札幌学生対校演劇祭.jpg
 いつも心がけていることは、『思わず冷蔵庫に貼りたくなるフライヤーを』です。
 デザイナーがどんなに思いを込めて頑張ってそのチラシをつくったとしても、フライヤーも所詮紙…。グシャグシャにされバッグ奥底で悲惨な姿で眠るか、一応クリアファイルに丁寧に入れられはするが、その後無残にも忘れ去られてしまうなど、その扱われ方は悲劇的宿命にあると思っています。いかにして捨てさせない要素を紙面上に作り出すか、残しておきたくなる”価値”をどこかに持たねば受け取った人の元で生き残れないと肝に銘じています。いつも「もし自分がこのフライヤー貰ったら、冷蔵庫に貼りたいか?」と自問自答して作ります。

Q:4
演劇宣伝のデザイン以外にも演劇の活動をなさっていると聞きました。ご自身の演劇活動についてお聞かせください。
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 宮崎県出身です。デザインを勉強したいと思い、札幌市立大学デザイン学部に入学しました。とはいえ、昔からデザイン系に興味があったということではなく、”なんとなくデザイン面白そうだったから”という理由で遠路はるばる来ました。
FRUITS BASKET」劇中.jpg デザインを勉強しに北海道に来たのですが、何を思ったか、”なんとなく目立ちたいから”という理由でパフォーマンス系なことを始めたいと思い演劇をすることにしました。(動機が不純すぎる…。)しかし、次第に演劇の面白さに気づき、演劇にのめり込んでいきます。デザインを勉強したくて北海道に来たはずなのに、演劇ばかりしている自分に矛盾を感じモヤモヤすることもありましたが、今ではデザインも演劇も根本的には変わらないところがあるなと感じ始め、どちらも楽しくやれています。

Q:5
演劇宣伝デザインを始められたきっかけは何でしたか?
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 あんまり覚えていないのですが、「演劇ばかりじゃなくてちゃんとデザインもしなきゃ!」と自分に言い聞かせるために始めたような気がします。

Q:6
北海道の演劇宣伝美術の現状について何かお感じになることがありますか?
 ++++++++++++木製ボイジャー「OSANANA」a.jpg
 これは自戒も含めてなのですが、北海道演劇界・札幌演劇界というものがあるとして、その界隈ではもはや十分に知られていることは、フライヤー裏面等で掲載されていないものが見受けられます。例えば、その劇団がどんな劇団なのか、過去の公演、作・演出の詳しいプロフィール、あらすじだけでなく今回の公演にはどんなチャレンジがあるのか等。フライヤーを手に取る人皆、その界に精通する人とは限らないので、演劇が初めての人にでも興味を持ってもらえるようなユニークな項目や構成を展開してもいいのではないかと思います。”お決まりの項目・展開”だけで構成されているものが多いような気がします。どのような人に、どのような情報を、どのように伝える必要があるか、今一度検討すべきかもしれません。また、”フライヤー冷蔵庫収集家”としては、もっともっと、いつまでも冷蔵庫に貼っておきたくなるフライヤーが増えればいいなと思います。

Q:7
今後の野望や展望、直近の予定などおありでしたら聞かせてください。
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今年の個人的活動テーマは「そもそも、”演劇”ってなんでしたっけ?」です。
 演劇の固定概念みたいなものを、後ろからやわらかく膝カックンするような取り組みをしたいと思っています。その一環として、今行っている活動として、まだ始めたばかりなのですが、みなみのげきじょう(https://www.facebook.com/southeater)という南区・真駒内地域で市街演劇をつくる取り組みがあります。ここでは、演劇に親しみのない人でも、演じることや物語を紡ぐことを、抵抗なく楽しく演劇に触れられるようなシステムの構築や企画をデザインしています。地域で演劇をつくることが、人々の日常を見つめ直すキッカケとして作用すればいいなと願って活動しています。
二人芝居ユニット・静と動のアーティストa.jpg 直近の予定だと、札幌演劇シーズン2015夏でintro「蒸発」(http://s-e-season.com/program/johatsu/index.html)に出演します。現在稽古中です。introはとても好きな作風なので、俳優として作品に参加できるのが楽しみです。
 そして今年11月には、自分が所属している「二人芝居ユニット・静と動」(http://saytodo.tumblr.com/)で劇場公演を行います。この公演は”参加型演劇”というコンセプトで、観客と一緒になって舞台を作っていくような公演を企画しています。

演劇膝カックン計画の集大成な作品になる予定ですので、ぜひ期待しててください。

Q:8
らてるね賞の今後に期待することや、このFacebookのページにどんなことを期待しますか?
 ++++++++++++
 Web上で、過去のフライヤーを一覧できるアーカイブができると嬉しいと思います。昔の北海道の演劇のチラシや劇団のロゴがどんなものだったのか時代を追いながら見てみたいです。また、宣伝美術の対象がチラシだけでなく、劇団や公演ロゴマークの「ロゴ部門」、公演予告編映像の「映像部門」、独特な宣伝企画を展開した公演には「企画部門」など、多種多様な部門がつくられるまで展開していくと面白いかなと思いました。
木製ボイジャー「ちゃぶ台の蟹」.jpg
 らてるね賞の「華やかなスポットライトに照らし出された舞台を下支えしているフライヤーのデザイナーに、ささやかにでも優しく灯りをかかげる」というコンセプトに深く共感しています。デザイナーは縁の下の力持ち、彼らを、時に厳しく暖かく、これからも照らしつづけていってください。ありがとうございました。

優秀賞を連続受賞した、小島達子さんです。

過去3回のらてるね賞のうち、第2回は「特別功労賞」のみの授賞でしたので、第1回、そして第3回で「優秀賞」を連続受賞し、連続して「大賞」を逃すという微妙な快挙を成し遂げた小島さんに、インタビューを申し込んだところ、快くお答えくださいました。
出演エンギデモナイ.jpg
出演あっちこっち佐藤さん.jpgQ:1
まず、小島さんは女優さんでもいらっしゃるわけですが、そもそも何で小島さんが演劇の宣伝美術を担当することになったんですか?
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 札幌の高校を卒業後、東京の美術短大に進みました。そのあと札幌に戻り、デザイン事務所にてグラフィックデザイナーとして仕事をしていました。その頃お芝居は趣味として観劇したりしていた中で、高校の演劇部の頃の友人に劇団イナダ組で美術スタッフ(小道具や作り物)を探しているので手伝わないかと誘われたのが再び演劇の世界に足を踏み入れることになったきっかけでした。そのうちに「演技やダンスの経験があるなら出るか」と言われ、役者をやることになり、その後にデザインができるからということで宣伝美術も同時に担当することになったという経緯です。現在は広告代理店の中でデザイナーをする傍ら、自分が携わるお芝居を中心に演劇のチラシも製作しています。

(写真上はイレブンナイン「エンギデモナイ」舞台より、右に居る気ぐるみでこちらを見ているのが小島さん。写真下もイレブンナインの「あっちこっち佐藤さん」舞台より、真ん中の警察官姿が小島さん、いずれも御本人提供の写真です)

Q:2
「らてるね賞を受賞した」と聞いて、どんな事を思いましたか?
++++++++++
 一回目のらてるね賞は、受賞の連絡が入るまで賞の存在自体を知らなかったような記憶があります。おそらくどなたかがエントリーしてくださったのだと思います。ですので、受賞したと聞いた時は「そんな賞が札幌にあるんだ!」とまず驚きました。その後賞の事を知っていくにつれて実感が湧いて来たといった感じです。二回目は、入賞の連絡を受けてとても嬉しかったのですが、正直大賞じゃなかったかあ…という思いもありました。

 一回目は想定していなかった受賞でしたが、二回目は賞の事も知った上で、大賞のことをは意識して(そのためにデザインするという意味ではありませんが)応募しましたのでちょっぴり悔しかったです。ですが、一回目の受賞で講評で言われた「大賞に足りなかった部分」を二回目に提出した作品が改善できていたかと言われると正直微妙ではありました。ですのでやはり、まだまだだなあ…と。
 こういった芸術分野は勝ち負けではないとは思っているのですが、つい燃えてしまうタイプなので、単純に大賞獲りたい!と思ってしまいます。頑張ります。


Q:3
過去2回、受賞した作品は、どういう構想でデザインなさったんですか?
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 イレブンナインのフライヤーを製作する際には、劇団の中でどんなフライヤーがいいか大きなコンセプトを話し合うシステムがありまして、1回目の作品「サクラダファミリー」も同劇団の江田由紀浩とアイデアを出し合いまとめました。
サクラダファミリー.jpg
このお芝居は、「崩壊していく歪んだ大家族」のお話でしたので、いわゆる普通の家の居間に一見家族は揃っているんだけど、誰もお互いを見ていない。何か変な家庭の風景を作りました。それを華やかな(でも不気味にも見える)花の装飾を周りに施して取り繕っている感を出しました。カメラマンさんには全体的にはやはり気持ち悪い色味にしたくて色加工してもらいました。イレブンナインの作品はコメディっぽい要素が必ず入るのでその要素も少し欲しくて。メインではない部分のご先祖の写真で遊ばせてもらってます。

 2回目の受賞作品「12人の怒れる男」は、もともとクスミエリカさんのデジタルコラージュをフライヤーに取り入れたいと兼ねてから思っておりました。
イレブンナインプレゼンツ『12人の怒れる男』01.jpg
俳優を使ってデジタルコラージュを作った例は札幌ではあまりないと思っておりましたのでそこで一応、手に取られた方に「なんだこれ、面白い」と感じてもらえるかな、と。このビジュアルになるまでクスミさんとかなり話し合ったり修正をしてもらいましたがギリギリまでこだわったおかげで結果的にクオリティの高いものが出来たと思っています。
 チラシ中面の12人の男達が白バックに並ぶビジュアルは、実は表面のデジタルコラージュ用に撮影した素材写真を、「コラージュに使うだけではもったいない」という理由で仮チラシに使いましたら思いのほかご好評を頂きまして、本フライヤーにも採用しました。
イレブンナインプレゼンツ『12人の怒れる男』02.jpg
こちらの方が格好良くて好きという方もいらっしゃったりもして。ウンウン言いながら製作したものよりもただ並べてみたもの…の方が逆にシンプルだと褒められたり。でもデザインてそういうものだよな…と。そこが面白い部分でもありますね。

(以下、当時の審査員の方々からの講評です。)
  ↓  ↓  ↓

力感に溢れる仕立てでフライヤーとしては重量級。ただ、力感溢れる舞台を、シンプルなフライヤーで紹介するとしたらどうなるか、その技を見てみたい(磯田憲一さん)/シュールで硬質な表現のフライヤーデザインによって、劇的なる物語をしっかり予感させる(下村憲一さん)/知名度のある演題だが、独自の舞台モノとして各役者の顔写真をコラージュして興味津津(横山憲治さん)/舞台の雰囲気が伝わる正統派の重厚なデザイン(根子俊彦さん)/重厚感あるコラージュで、タイトル処理の巧さも抜群。が、新鮮味に欠ける(和田由美さん)/黒く引き締まった画面、シャープな映像、計算された全体の構図など、一言で言えば「格好良く」しあがっている。17世紀オランダの集団肖像画を21世紀に実現したような作品である。しかし余りにオーソドックスで隙のないことが、逆にチラシとそれを取る者との間に距離感を生み出してしまうかもしれない。人が人を裁くときに必要な「共感」の想像力が入り込む余地を少しでも残しておいて欲しかった(北村清彦さん)

Q:4
受賞した作品の他にどんなデザインのお仕事をなさってますか?
++++++++++
 普段は子育て情報フリーペーパーをデザインする仕事をメインとしてやっています。他、美術館の看板デザインや展示レイアウトデザインなど。芝居のチラシのフライヤーですと、過去には主なもので劇団イナダ組、初期のTEAM NACS。現在はイレブナイン、北海道文化財団や札幌以外の地域の市民劇、所属劇団以外の劇団のお仕事もたまにいただくことがあります。演劇以外でもダンスや舞踏の宣伝美術のお仕事をいただくことがありますが、主なのはやはり演劇の宣伝美術ですね。
トップガールズ.jpg
(これも小島達子さんデザイン、千年王國プロデュース「TOP GIRLS」も最終審査まで残ったため、同時受賞となりました)

Q:5
この受賞をきっかけに、何か変化はありましたか?賞金の使い道は?
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身辺の変化は特になかったと思いますが、心境的にはこのような賞の存在を待っていたようなところもありますので、とてもわくわくしています。賞金は、劇団の金庫に入れさせていただきました。


Q:6
演劇の宣伝美術において心がけていること、こだわっていることはありますか?
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 昔から芝居のフライヤーを作る時に意識しているのはデザイン性よりもインパクトでした。イラストなども上手に描けませんし、デザインセンスがあまりないと自覚しておりますのでアイデアで勝負しています(笑)折り込みに入っていてまず「カッコイイ」「カワイイ」「なにこの変なチラシ」でもなんでも良いのでとにかく手に取ってもらえるもの。だけど決して品のないものにならないように、俗っぽい言い方ですが出来る限りプロっぽく…を意識しています。
劇団イナダ組『プーチンの落日』.jpg
 イナダ組で最初にフライヤーを作り始めた頃は、イナダさんに「お前の好きなように作っていいぞ」と言われ、本当に芝居の内容とは関係なく役者の写真も使わずフランス映画みたいなビジュアルとか、タイポグラフィーがメインのデザインとか自由に作らせていただいていました。ですが動員が伸びてチラシやポスターが出回るようになった時に、制作陣に「今までのフライヤーのデザインでは何のチラシかわからないので、もっと人気のある役者達を使ったビジュアルにして欲しい」と要望があり、そこからは役者の写真を前面に押し出したビジュアルのチラシを作るようになりました。

 ただ、演劇の場合は、チラシを作る時に脚本がまったくできていない時もありまして、脚本家から聞き出した僅かな手がかりをなんとか拡げて作るるのは大変でした。主役を○○にするからと言われて彼がメインのチラシを作ったのに、それから台本が進んでいき、最終的に別の人が主役になってしまったこともありました。

イレブンナイン『エンギデモナイ』.jpg
 他のデザインの仕事と比べて演劇の宣伝美術の特徴的な部分は、自分が俳優でもあるということで他の仕事よりも世界観を創造しやすいところもあるのかとは思っています。ですが一方向にハマってデザインを考えてしまうと、一般のお客さまに伝わらないこともありますので、極力俯瞰で自分が客側、芝居のことを知らない方側に立った目線でデザインコンセプトを考えるように意識しています。

Q:7
今の、札幌の演劇の宣伝美術を眺めてみて、どんな感想をお持ちですか?
++++++++++
 私が演劇を始めた1990年代に比べて、綺麗なチラシは増えても、「面白ーい!」と思うものがなくなってきているような感じはします。最近はA4サイズかB5サイズのチラシしか見ませんが、昔は正方形や多角形、丸型といったような風変わりな形や紙質のチラシも楽しかったです。デザインが可愛いからと自分の観たお芝居のチラシやチケットをファイリングして後に見直して楽しむといった人も多く見られました。紙には紙にしかない魅力がたくさんありますので、お芝居の内容や情報を伝えるだけでなく、デザイン自体を楽しむというか。そんなフライヤーが増えたら楽しいなと思います。若い劇団さんには若い発想でいろいろ遊んでみて欲しいと思います。もちろん自分も負けずに頑張りますが!

12人の怒れる男2015.jpg
Q:8
今後の野望、展望などと共に、直近発表するデザイン作品の予定などありましたら教えてください。
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 札幌には素晴らしい作品を創る偉大な先輩達も、従来のデザイン技術などに囚われずすごいアイデアを取り入れてくる若い才能も、多く溢れていると思います。その方々に刺激を頂き、新しい感性も磨き、切磋琢磨しながら楽しんでやっていきたいと思います。
 今後のものとしましては、今年夏の演劇シーズンにて再演される「12人の怒れる男」の新しいフライヤーが設置され始めたところです。
12人の怒れる男2015-2.jpg
現在製作中のものは、オクラホマさんのコントライブのチラシと、秋に上演される「じゃぱどら!!」のチラシです。どちらも7月頭には完成する予定です。その後は11月上演予定のイレブンナインの新作のデザインを予定しています。こちらには出演も予定しています。

Q:9
らてるね賞の今後に期待することや、このページにどんなことを期待しますか?
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 私自身、らてるね賞の事をまだまだわかっていないところがありますのでのこのらてるね賞のページで、過去の受賞者の方のことや伏島さんのこと、ほかいろいろと知ることができるのがとにかく嬉しいです。

 1回目に受賞した受賞式の際に伏島さんとお話させていただき、そのお優しさと熱意に胸を打たれたのですが、その後ゆっくりお話する機会がないまま、訃報を聞きました。ですので今回開催されると聞いた時は、微力ながらもこの賞を盛り上げるためになんとか力になりたいと思っていました。実行委員会の方々の情熱も素晴らしいですし、いろいろな意味で期待しかありませんね。
 札幌にこんな素敵な方々が作ったこんな素敵な賞があるんだよということが少しずつでも知られていったら嬉しいなと思います。

+++++++++++++++++
 小島さん、本当にありがとうございました。これからもらてるね賞を賑わしてくださる事を期待しています。

第2回「らてるね賞」特別功労賞受賞 若林瑞沙さん

 2013年、第2回「らてるね賞」特別功労賞を授賞した、若林瑞沙さんにインタビューを試みましたので、ここで紹介させて頂きます。

Q:1
結構な数のデザインをやっているように見えますが、年間何作品ぐらいの演劇ビラのデザインをなさっていますか?
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 札幌座のチラシはTPS時代からかれこれ15年ぐらいほぼ全作品のチラシを制作しています。ここ数年は札幌演劇シーズンの公式パンフレットも制作してます。その他劇団のチラシと演劇以外の公演チラシも入れると年間4本~7本ぐらいでしょうか。直近では札幌座の「ルル」「36枚の声」昨年は札幌座「禿の女歌手」
36mai.jpg1-hage.jpg

劇団千年王國「ローザ・ルクセンブルク」(札幌初演・再演地方公演)などを制作しました。
1-RL_A4_omote.jpg

Q:2
演劇の宣伝美術以外に、普段、どんなお仕事をなさっていますか?
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飲食店のロゴやパンフレット、企業や学校パンフレット、イベントのDMやチラシ、多くはありませんがパッケージデザイン等、グラフィック全般制作しています。(若林さんのデザイン事務所、スタジオCOPAINのHPをご覧ください)
http://copain.p1.bindsite.jp/

Q:3
そもそも、演劇の宣伝美術を志したきっかけは何でしたか?
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 宣伝美術を志したという訳では無いのですが、1998年に北海道演劇財団主催「逃げてゆくもの」(2000年公演)のデザイナーコンペがあり、それに採用されたのが宣伝美術を携わる大きなきっかけになりました。当初、私が務めていたデザイン会社の社長が応募する予定でしたが仕事で手が回らなかった為、新人の私に応募してみないかと…。まさか、採用されるとも思 ってもいませんでしたし、この先、宣伝美術にここまで関わるようになるなんて想像もしていませんでした。

Q:4
いきなり演劇の世界に接して、何かご苦労はありましたか?
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「逃げてゆくもの」のコンペに採用されたはいいものの、デザインをいちから作り変える事となり、そこではじめて生みの苦しみを味わいました。割と大雑把な世界観で表現したものを、より具体的に戯曲の世界観を表現するにはどうしたらいいのか。チラシを見て「観たい」と思わせるにはどうしたらいいのか。加えて自分が担当する初めての仕事、迫る締切、デザイナーの先輩方を押しのけて採用された重圧で、熱は出す、吐く…で大変でした。

Q:5
演劇の宣伝美術の仕事って、他の仕事と何が違いますか?
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色々違いますね。
 まずは、台本もしくは原作を読みこむ事。装丁デザインもそうですが、その他の仕事ではまず無い工程です。作品の世界に入り込まなきゃ実質作業に入れませんからね。私は本当に不器用なので演劇の仕事に一度とりかかると、メインビジュアルをデザインする迄まったく他の事が手につかなくなります。頭が違う世界にいっちゃいます。どうにかしたいです。
hagiwara.jpg

 しかしまったく台本が無い状態で作らなければいけない場合もあります。その場合は演出家のイメージをどれだけ拾い集めれるかが勝負です。ある芝居で完成したチラシをみて演出家さんが舞台のイメージをさらに肉付けした…と聞いた時はとても嬉しかったです。他ではまず経験できません。
 又、チラシを手にとったお客さんが舞台を観に来るその直前迄その芝居の「顔」になるという事も、特殊だなと思います。

 オペラ、落語、クラシック、バレエなどはキャストや演目など、文字情報を出来るだけ大きく、表面に入れる事が多いのですが(右の写真→)、演劇はその逆が多いように感じます。


Q:6
そろそろ若林さんもベテランと呼ばれてしまうお年頃ですが、今、札幌の演劇の宣伝美術を眺めてみて、どんな感想をお持ちですか?
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 憧れの先輩方が活躍してますので、のんきに過ごしていましたが…そうなんでしょうかね。昔に比べ、宣伝美術のクオリティーは高くなっていると感じる反面、個性のないチラシも多くなってきたように感じます。ただ、誤解の無い様にひとつお伝えしたいのは、デザイナーが作っているか、いないかで感じているのではありません。いくらデザイナーが綺麗にデザインしても、スタッフの愛のある手書きのチラシやPOPに勝るものはありません。

Q:7
第2回らてるね賞の特別功労賞を、亡くなる直前(1ヶ月前)の伏島さんから受賞なさいました。その時の事をお聞かせください。
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 伏島さんが病に倒れ、今回はらてるね賞は開催しないと聞いておりましたので、受賞のお話を頂いた時は大変驚きました。伏島さんがらてるね賞を持続するのが難しいと断念した際、最後は私に賞を…とおっしゃって頂いたそうで。その時は、なんというか…戸惑いもありましたし、喜びもありましたし… うまく言葉にできませんね。
1-DSC_2020.jpg
 授賞式は札幌座の「西線11条のアリア」の公演後、伏島さんと作・演出家の斎藤歩さんのトークショーの中、受賞させて頂きました。「西線11条のアリア」は斎藤歩さんの戯曲の中で伏島さんが特に好きな作品で、伏島さんの強い希望で再演されたそうです。私はこの作品のチラシを初演からデザインしています。
11jo.jpg
伏島さんはずっと私の過去の宣伝美術を評価してくださり、このような賞を頂き大変光栄でした。



 授賞式の中で伏島さんは

『みなさん、どうかチラシを隅々迄見てください。スタッフのところも見てください。そこに誰がこのチラシを作ったのかが書いています。宣伝美術の名前があります。宣伝美術という存在を知ってください。作品に影響を 与える仕事です。そして劇団のみなさん、どうか必ずチラシを作った人の名前を掲載してあげてくださいね。』

とおっしゃっていました。とても有り難く、励まされ、このお言葉にふさわしい仕事をしなくてはならないなという思いで聞いていました。

Q:8
そもそも、伏島さんが「カフェらてるね」を開店した時(2012年春)、お店のロゴのデザインを若林さんがなさったと聞きました。伏島さんとのそもそもの出会いは?
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 伏島さんと私の出会いは、すすきのの私がよく通う呑み屋でした。その時に伏島さんはすでにベロベロに酔っぱらっておりましたが、会話は成り立っていたように感じていました。しかし、次の日に伏島さんからメールを頂き、こう書いてありました。
「私がずっと会いたいと思っていた方の名刺が背広のポケットに入っており、愕然としております。何故ならまったく憶えていないのです。」
 これがきっかけで、何度がメールをやりとりし後日改めて伏島さんと劇場でご挨拶しました。それが2008年頃だったと思います。「CAFEらてるね」は2011年12月、BLOCH(劇場)と同じビルの1Fにオープンしました。らてるね賞のロゴは、伏島さんのご遺族の許可を頂き、その時のデザインをベースに再デザインしたものです。
   cafelaterne.jpg   laterne_award_logo_tateA.jpg

「CAFEらてるね」がオープンした時に伏島さんから頂いたメールが残っていました。(2011/12/24, Sat 10:56)

『皆さま ようやく灯りました。「CAFEらてるね」のともしび。店はいま、お客さまからいただいた花や装飾で華やいでいます。店名は学生時代に世話になったLATERNE(独、ヘッドランプ)よりつけました。小さな灯りの意です。
(中略)
当店は小舟ながらアートとコミュニュティの旗を掲げて出航しました。まちづくりを応援するコンサルタントカフェ、旅と観光のコンシェルジュカフェでもありたいと思います。長い仕事人生のなかでいつしかご相談に応じることがわたしの喜びとなっていました。』

ここから「らてるね賞」が始まったのだなと感じます。

Q:9
らてるね賞実行委員になって頂きありがとうございます。誘われて断る自由はあったと思うのですが、何故引き受けてくださったんですか?
+++++++
 断る自由もありましたが、断る勇気がありませんでした(笑)実は生前伏島さんに選考委員なってくれないかと言われてたのですが、選考するような立場では無いとお断りしていました。今回はそうではなく、実行委員という立場でしたし特別功労賞も頂き、このようなカタチで恩返しできるなら…という気持ちでしょうか。
 それと、らてるね賞が宣伝美術の担い手を励ます…という趣旨であるならば、らてるね賞が発行するものは、ある程度ちゃんとしないといけないのではないかという思いもありました。その役目が空いているようならお手伝い出来るかなと。

Q:10
実行委員ではありますが、現役のデザイナーとして今後発表なさる作品 は選考対象になるはずです。今後の仕事について、何か野望とか、展望とかありますか?
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 演劇を知らない人にもっと観てもらいたい。札幌演劇シーズンの公式パンフレットはそこを意識し、劇団の単体チラシとは違う考え方でデザインしています。なかなか、難しいですが、市内で配布されたパンフレットを見て、初めて演劇を観たという方もいらっしゃるようなので、演劇ファンが増える様に頑張りたいなと思います。

Q:11
らてるね賞の今後に期待することや、このFacebookのページにどんなことを期待しますか?また、これから演劇の宣伝美術の志す若い人たちや、次世代のデザイナーに期待する事はありますか?
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 札幌市内では中々手に入らない地方の劇団のチラシもらてるね賞を通じて見てみたいです。

 賞を頂く事はとても光栄な事ですし、活力にもなります。ただ、賞をとる、とらないを意識しないでほしいなとも思います。賞をとるために作るとか…まぁそれは無いと思いますが、らてるね賞がそれぐらい大きな賞になるのは嫌だなと(笑)ニュースにもならないし受賞した方の人生に大きく影響を与える程の賞でもないけれど、ただ、年に一度だけ宣伝美術がささやかなスポットライトを浴び、デザイナーが「エヘヘ」となれる。らてるね賞はそんな場でありつづけていけたらと実行委員として思います。

 若林さん、長いインタビューにお応えくださり、ありがとうございました。いずれも札幌座(TPS時代も含む)の作品ではありますが「冬のバイエル」、「秋のソナチネ」
Bayer.jpgaki.jpg
「ブレーメンの自由」、「美男ペコパンと悪魔」
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「冬物語」、「夕鶴」など、数多くの作品をデザインされています。
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作品ごとに全く異なったイメージを発信し続ける若林瑞沙さんの今後の作品にもご注目ください。

2013年 第2回らてるね賞のご紹介

 2013年の第2回らてるね賞は伏島信治さんが闘病生活に入られたため、候補作品の収集が叶わず、大賞・優秀賞の選考はできませんでした。それでもお亡くなりになる一か月前の2014年2月9日、教育文化会館の舞台に車椅子で登場し「どうしても表彰しておきたい」と、「特別功労賞」を若林瑞沙さんに授賞なさいました。

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 この時、伏島さんは輸血までして、劇場に駆けつけてくださり、満員の客席に向かって、力強くメッセージを発してくださいました。そしてこのお姿が、私たちが伏島さんにお会いした最期のお姿となってしまったのです。
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 若林瑞沙さんには、今回らてるね賞の実行委員にもなって頂き、赤いロゴも若林さんにデザインして頂いています。
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らてるね賞、事務局よりのご挨拶。

 らてるね賞実行委員会で、事務局を担当している札幌座・チーフディレクターの斎藤歩と申します。

 このページを今後皆さんとどう活用して行こうか、まだ模索中ですが、今後、若い事務局員たちと、このページや、twitterなどのネットワークメディアを運用することで、北海道の演劇宣伝美術にまつわる様々な話題を、活発にやり取りできれば、北海道の演劇にとって、何かの足しになるのではないかと、ちょっとだけ期待をしているところです。

例えば・・・

 同時期に、同じ作品が東京と札幌で上演されているのですが、こんなにも違うデザインのチラシが配られています。

 1~2枚目は今札幌で配布されている「ルル」(札幌座/演出:橋口幸絵/宣伝美術:若林瑞沙)のチラシ
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3~4枚目は今東京で配布されている「ルル」(THEガジラ/演出:鐘下辰男/宣伝美術:坂村健次)のチラシです。
1-IMG_0308.JPG1-IMG_0305.JPG
鐘下さんが主催するガジラには、以前何度かお世話になっています。そんな鐘下さんが若い人たちと「ルル」を創っているようで、チラシを送ってくれました。

 演出家によって、またはデザイナーによって、作品のとらえ方が違うわけですし、企画の成り立ちや上演の意図、ターゲットとなる観客層によっても、デザインは大きく異なり、カンパニーによって、配布するチラシの役割も大きく異なるわけですから、違うのは当たり前です。

 裏面が担っている役割も、随分違うようです。どうしても掲載しなければならない情報も多い上に、予算の制約もあるので、裏面にもデザイナーさんの様々な工夫があり、紙質にもデザイナーのこだわりが見られるようです。

 紙質・印刷の仕上がりなど、近年、Webで注文して印刷を安価に頼める業者が増えて、演劇宣伝美術業界も随分ネットで印刷されたものが多くなっていると思います。かつては、印刷する前に色稿を印刷屋さんに提出してもらい、実際にインクを乗せた場合の発色具合や、紙質による色の乗り方の違いを、一つ一つチェックしてから印刷してもらっていた事もあったようですが、Webなどを通じて印刷を頼む場合、安価で早く、そうした手間は省ける分、実際に作品が届いた時にイメージと異なっている場合もあると聞きました。

 そんなことの善し悪しも含めて、北海道の演劇宣伝美術にまつわる様々を、ここで紹介して行こうと思っています。今後とも、よろしくお願いいたします。

2012年度、らてるね賞 大賞受賞者 長尾修治さん。

 2012年の第1回「らてるね賞」の大賞を受賞した長尾さんが、今回のらてるね賞の継続決定にあたって連絡を取ってみたところ、快く資料や情報の提供に応じてくださり、いくつかの質問に答えてくださいましたので、ここでさっそく紹介させて頂きます。

 長尾さん、ご協力、ありがとうございました。今年も長尾さんのデザインしたフライヤーが審査対象となっています。今後も素敵なデザインで劇場界隈を刺激的で賑やかに、楽しくしてくれることを期待しています。

Q 1:「らてるね賞」を受賞したと最初に聞いた時どんな感想を持ちましたか?
A 1
→「賞への応募は、教育文化会館さんが応募していて、自分はまったく憶えがなかったので大変驚きました。しかも第一回の大賞ということで自分でいいのかとも思いました。」

Q 2:「キネマの怪人」のデザインは、どのような経緯で生まれたのですか?何かご苦労なさったことがあれば、お聞かせください
A 2
→「2010年頃から教育文化会館の情報誌の制作に関わっていた流れで、教文の市民演劇団体の告知チラシ・ポスターの依頼を受けました。当時教文職員であった山下智博(現在は中国を拠点として芸術計画家として活躍中)と演出家の棚田満さんのアイデアで、昔の映画のポスター風にしたいという大筋は決まっていました。
 苦労したところは、ポスターの絵づくり自体で人物はすべてカメラマンに撮影してもらい、その写真をベースにPC上でイラスト風に描き、特殊な衣装などは、この段階ではなかったので、後から資料を見ながら描き足していきました。演出家 棚田さん所有の昔の映画ポスター集を研究し、昔の映画風を再現した無駄に迫力のある作品に仕上がりました。
 元教文職員山下さんのブログ上で、てらてるね賞受賞の際、「キネマの怪人」の書き込みをしていましたのでご参考までに。
http://yamashita-tomohiro.com/blog/?p=2319

Q 3:北海道の演劇の宣伝美術というジャンルの現状に対して何か感想や御意見をお持ちですか?
A 3
→「演劇関連のデザインは、センスの良いものが多いと思うので、それをまとめて見れたらと思います。」

Q 4:もしかして、今年2月の雪まつりの雪像ステージ「雪の国のアリス」のデザイン(下の写真)も長尾さんですか?
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A 4
→「そうです。教文がらみで沢則行さんの仕事を何回かやらせていただいていたこともあり、この時は札幌市からの依頼でしたが、デザインを担当することになりました。

Q 5:長尾さんのなさっているデザインのお仕事(演劇に限らず)で、紹介しても差し支えないものがあれば教えてください。
A 5
→「教育文化会館情報誌「らく」、「act」。その他、教文広報物多数(今年は「沢則行オホーツク(下の写真)」「ダンスシンポジウム」「教文演フェス2015」を担当しました)
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 演劇関連以外では、円山動物園で販売している「どうぶつぬりえ」(https://www.dioce.co.jp/maruyama/)というものも作っています。

2012年、第1回らてるね賞の結果です。

 いきなり「らてるね賞」とか「北海道演劇宣伝美術賞」とか言われても良くわからない方もいらっしゃると思いますので、少しずつ、これまでの「らてるね賞」をここで少しずつですが紹介させて頂き、この場で様々なご意見をたまわったり、実行委員会で相談したりしながら、これからの「らてるね賞」を形作って行ければと思います。

 2012年に伏島さんが突然、ご自身のポケットマネーで始めた「らてるね賞」でしたが、その記念すべき第一回の大賞は

教文13丁目笑劇場「キネマの怪人」の宣伝美術を担当された
 長尾修治(札幌大同印刷株式会社)さんに贈られました。

写真は、受賞作品(表面・裏面)です。
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選考の結果や講評は以下のようなものでした。

 ※ ※ 伏島信治さんのブログより、引用 ※ ※

 第1回の北海道演劇宣伝美術大賞の選考会を12月22日(土)午後、札幌市内のシアターZOOで開催した。2012年に道内で制作発表された演劇のチラシ(フライヤー)のうち収集することができた148点を対象に選考した結果、大賞1作品と優秀賞2作品を次のとおり決定した(敬称略)。
◎大賞:教文13丁目笑劇場「キネマの怪人」宣伝美術:長尾修治(札幌大同印刷株式会社)(3月3・4日上演、札幌市教育文化会館)
◎優秀賞:劇団亜魂(アジアンハーツ)「それじゃバイバイ」宣伝美術:温水沙知(ぬくみさち) (2月17〜19日上演、レッドベリースタジオ)
◎優秀賞:演劇ユニット イレブン☆ナイン「サクラダファミリー」宣伝美術:小島達子、宣伝美術撮影:奥山奈々、星野麻美 (11月7〜9日上演、札幌市教育文化会館)
選考は、①演目の魅力を伝えているか、②美術・デザイン・構成がすぐれているか、③その他見る者に訴える力(独創性等)を有するか、という点から総合的に判断する。
 今回の選考に当たった委員(敬称略、計6名)
 磯田憲一(北海道文化財団理事長)/下村憲一(建築家)/根子俊彦 (札幌国際プラザ総務企画部長)/横山憲治(PMFを応援する会役員)/ 和田由美(亜璃西社代表取締役)/伏島信治(北海道演劇財団評議員) 
〈講評〉            
 大賞に選ばれた「キネマの怪人」は絵と活字が優れ、バランスも確かで演目をよく伝えている。裏面に企業CMを取り入れたのは工夫だが、演目の情報が詰め込みになって解説文字も小さく、老人の目にはつらくなった。
 優秀賞の「それじゃバイバイ」は色の使い方がうまく、ソフトな絵と文字のバランスもいい。裏面のコピーは冗漫でシンプルな構成の良さがやや薄れた。
 「サクラダファミリー」はうまい。おもしろい。手に取りたくなる。が、その分、最小限必要な上演情報が表面から消えた。あんばいがむずかしい。
 審査全体を通じて、演劇にかぎらず広報チラシはとかく宣伝物として消費されることが多いのに、思いと工夫をこめて制作する人々がいることを改めて感じた。じつに多様な表現があることもわかった。しかし、思いがチラシの紙内にこもり演目を十分に伝えていないケースが少なくない。未知の観客に届ける前に、仲間内の批評にとどまらない、より広い批評・点検を望みます。
 お忙しい年末に手弁当で参加された委員諸氏に厚く感謝します。(伏島)
〈大賞・優秀賞以外の入選作品(6作品)〉
・サンライズホール第294回自主企画事業「境目に降る雪」宣伝美術:いちのへ宏彰(3/20、あさひサンライズホール)
・演劇ユニット イレブン☆ナイン「天国への会談」宣伝美術:小島達子、宣伝美術撮影:奥山奈々(6/9・10、札幌市教育文化会館)
・日本劇団協議会新進演劇人育成公演「輪舞(ロンド)」宣伝美術:若林瑞沙(6/27〜7/2、シアターZOO)
・「札幌演劇シーズン2012-夏」宣伝美術:若林瑞沙(7/21〜8/20、コンカリーニョ、シアターZOO)
・BLOCH「イゼン、私はアンドロイドでした」フライヤー:山田マサル(9/13〜 15、BLOCH)
・弦巻楽団「果実」チラシデザイン:藤原柚(9/26〜28、サンピアザ劇場)
〈道外制作チラシ推薦作品 (3作品)〉
・弘前劇場「湖の秋」宣伝美術:木村正幸(4/28〜30、シアターZOO)
・青年団「月の岬」宣伝美術:太田裕子、チラシイラスト:マタキサキコ(6/8 〜30、座・高円寺ほか。道内公演なし)
・ナイスコンプレックス「ゲズントハウス〜お元気で〜」宣伝美術:川口岳仁、宣伝撮影:栗栖誠紀(11/1〜4、シアターZOO)

 ※ 以上、伏島信治さんのブログ「N爺の藻岩山麓通信」(http://laterne.exblog.jp/)より、引用 ※

「らてるね賞」とは

 華やかなスポットライトに照らしだされた舞台を下支えしているフライヤーのデザイナーに、ささやかにでも優しく灯りをかかげようと、故伏島信治さんが2012年に創設した極めて私的な賞です。

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 写真は山登りが大好きだった伏島さんが、焚火を見つめているものです。火の傍にしゃがみ込んで、優しく、実に嬉しそうにしていらっしゃいます。生前の伏島さんは、まさにこのような姿で北海道の演劇寄り添い、このような眼差しを注いでくれていました。

 この度、数名の有志で伏島さんの遺志を引き継ぎ、実行委員会を再結成し「らてるね賞」を継続することになりました。伏島さんが生前一人で劇場界隈を歩き、足で収集し、ご自身のポケットマネーで賞を設けていたように、私たちも実行委員で手分けをしたり、劇団の皆さんの協力を仰いだりしながら、演劇関係のフライヤーの収集を開始しています。これまで既に上演済みのフライヤーについても、数多くの劇団や劇場関係者のご協力を頂き、順調に収集が進んでいます。12月末まで収集を続け、来年早々に審査員の方々による審査を経て、2015年の演劇宣伝美術作品の中から大賞・優秀賞を表彰させて頂く予定です。

 今後、このブログや、Facebook、twitterなどの媒体を通じて、賞の概要やこれまでの受賞者、選考基準や方法、対象作品の収集基準など、順次お知らせする予定です。
 このページで様々な演劇の宣伝美術にまつわる話題を紹介して行きたいと思っていますので、お付き合いくだされば幸いです。

 らてるね賞(北海道演劇宣伝美術賞)実行委員会事務局

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